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2016 MY TOP FILMS 50位〜41位

次点. 裸足の季節

デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督作

/ トルコ映画 (ドラマ)

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5人姉妹の末娘ラーレは、イスタンブールから1,000キロの場所にある小さな村で暮らしている。10年前に両親を亡くした姉妹たちは、祖母に育てられ美しく成長するが…。

 ソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ』的ロングヘアの少女姉妹たちで埋まる画面が強烈で男ならちょっと引いてしまうほどに魅力はある。しかし、描いてるものの狭さが露呈してる点が気になった。端的に言えば『イスラム圏の女性の権利』を一方的に描いている。宗教・文化が絡む作品なだけに殊更に『自由化』を押し付けるのはどうなのか。イスラム文化のプラス面も描くべきではないかと思わされた。

 日本を見渡しても自由恋愛が進みすぎた結果として結婚できず悩む女性は増えており、最近は自由恋愛ではない恋愛作品が増えてきてる。理不尽にも必然なく赤の他人の異性と体が入れ替わる『君の名は』、男と遊女を引き裂く当て馬で嫁に嫁ぐ羽目になった『この世界の片隅に』、安定を最優先して契約結婚する『逃げ恥』。今作もやはり自由の代償となる不安定の息苦しさの一端を、そしてイラン映画『別離』などのようにイスラム圏の宗教・文化の魅力も少しは描くべきだったように思う。

 

50. アンフレンデッド

レヴァン・ガブリアーゼ監督作

/ アメリカ映画 (ホラー)

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全編映されるのはPC画面、登場人物はSKYPEのグループビデオ通話で構成される低予算作品ながら興行収入3200万ドルを超えるスマッシュヒットを記録したホラー映画。 

 SNSホラーという側面以上に怖くて気持ち悪いのが、若者たちの素早いPC操作。高校生男女がSKYPEのグループビデオ通話しながらFacebookを閲覧したりYOUTUBEを見たり音楽をかけたりがテンポよく行われる。オンラインでのつながりを使いこなし人と繋がる事を突き詰めたその光景には、スタイリッシュとグロテスクが混在している。

 加えてクリックしたい箇所が何故か押せなくなっていたり、消したいものが消せなかったり、中々動画が読み込まれなかったり、画面が粗くなったり、プライベートに突如通知音が割り込んで来たり、PCと付き合う上で嫌気のさす描写をとことんホラーに転用。恐怖度は低いがPC画面演出の全てが詰め込まれているという意味で必見の内容。

 

49. シングストリート 未来へのうた

ジョン・カーニー監督作
/ アイルランド映画 (青春)

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MV全盛期の1985年のダブリンを舞台にバンドを組みモデル志望の女の子に「僕とMV撮らない?」と振り向かせようとする若者を描いた青春映画。

 簡単にメンバーが集まり、楽器も沢山所有、レコードも兄から横流し。ビデオカメラも容易に手に入り、編集の苦労も描かれない。主人公の『モテたい』に付き合わされるだけで空気なバンドメンバー。そんな「果たしてバンド映画と言えるのか」と疑問に思える映画が大評判なのはやはり、80年代を舞台にしたバンド映画でありながら音楽に対する距離感が10年代的だからだろう。

 iPhoneで動画を撮影しSNSでメンバーを募集、ラップトップで簡単に音楽を作れストリーミングで気軽に音楽を仕入れられる現代だからこそ受け入れられる。バンド映画なのにメンバー其々をきちんと描かずメンバー同士の音楽的な衝突も皆無で主人公の思いのままなのも、バンドという形態の幻想が解体されたMaroon5(まさに今作の主題歌)を頂点とする現在の音楽界に近い。今作は80年代の青春バンド映画の顔をした10年代の『自分1人で曲作って、友達に手伝ってもらってスマホで動画撮ってアップする』物語だ。だからこそ、端折られてるバンドとしての設定に対して違和感なく受け入れられる人が多かったのだろうとも思う。

 しかし音楽好きが今年見るべきはこちらではなく、今年公開の70年代末を舞台にしたNetflixドラマ『ゲットダウン』一択。【主人公が女子への恋と並行して音楽にのめり込む青春映画】という構造は全く同じだが、時代背景を丁寧に描きヒップホップという新しい音楽に出会う興奮やレコードを手に入れる苦労、論理的に素養を学んでいく姿やMCグループのメンバーとの関係性にも重きを置いている。やはり2016年はロックではなくブラック・ミュージックの年だ。

 

48. シン・ゴジラ

庵野秀明監督作

/ 日本映画 (怪獣)

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【3.11が東京で起きたら】を現行の政治風刺と庵野秀明のめまぐるしいテンポの演出で見せゴジラをアップデート。敗者日本の再出発を描く。

【家族や恋人の様な守るべき存在】をあえて用意せず感情移入を促す方法として使用したのは『自分たちの街が破壊される』というAR/VR体験の様な面白さ。ドライな現代人、ポケモンGO同様特に都市部に生きる観客を中心に評判を獲得。

 しかし東京しいては広く見れば日本を中心にした観客こそが楽しめる作品になっており、海外では『日本はまだやれるぞ!』という他人の決意表明を聞かせれるだけの自意識過剰作品とも捉えられ『君の名は』と大分差がついてしまった。やはり日本をスクラップ&ビルドするならば、壊すべきはガラパゴス化した現状か。

 

47. インサイダーズ内部者たち

ウ・ミンホ監督作

/ 韓国映画 (復讐劇)

f:id:KOTOYUKI1108:20161230231324p:plain大統領候補汚職という利権者や金持ちへの怒りをモチーフに韓国得意の復讐劇とゴロツキと検事のバディものを組み合わせた韓国R指定映画歴代NO.1ヒットを記録した作品。

 日本が決断できない政治家を「ゴジラ」という国民的アイドルをパッケージに描いたのに対し、韓国は政治の腐敗をお家芸復讐劇で描く。残虐描写は他の韓国映画に比べると控えめながら(それでも手の切断描写はある)、復讐相手が政治家という事もあり社会的制裁がオチになるので韓国映画らしからぬ後味の良さが魅力。良くも悪くも民意を反映したマーケティングが成功した作品で内容に深みはないが、特筆すべきはキャラクター描写。

 敵側となる政治家の腐敗をグロテスクに描くためのゲスな性接待とチ○コゴルフはもちろん、味方側のゴロツキには改心の気持ちよさを、検事には正義感ではない出世欲を背負わせラストでそこから人間的に成長させるという物語に仕上げていた。ストーリーとしては個人的な怨念での復讐描写をクライマックスに置くことが出来ない分、汚職側のやり口の汚さを浮かび上がらせ、なかなか復讐が果たされないという二転三転の構成を工夫していた。 

 

46. イレブン・ミニッツ

イエジー・スコリモスフスキ監督作

/ ポーランド映画 (ドラマ)

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女たらしの映画監督、やきもち焼きの夫、出所直後のホットドッグ屋、強盗に失敗した少年などの11人の男女と1匹の犬。わずか11分の間にそれぞれの人生が絡み合い…。

 描いてるものは『偶然の事故』だがその背景に様々な人生が重なる作りは西欧における危機意識の現れか。日本においては『天災』が描かれがちだが、やはりヨーロッパではテロなどを暗喩した人災を描く事が重要なのだろう。

 演出も高齢監督に思えないスタイリッシュなもので、V∞REDOMSのライヴを彷彿。11人の男女の事情を小刻みに分割して少しずつ見せ徐々に盛り上げクライマックスでぶちかます音響はとにかく圧倒的。ただし、登場人物の背景を一切説明せず一人一人の人物造形をちょっとずつ描いていく物語は共感もしづらく全貌がラストにならないと見えてこない。この手の群像劇の割に右脳で見る映画なので、パズルを期待してはいけない。

 

45. ドント・ブリーズ

フェデ・アルバレス監督作

/ アメリカ映画 (ホラー)

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盲目な老人の家に貯金を盗みに家に忍び込んだ若者だが、老人は元軍人で襲われる羽目に。アメリカの夏の興行レースを制した新感覚ホラー映画。

『鬼が盲目な密室かくれんぼ』というワンアイデアに陥りそうな所を、現金強奪モノとしての側面、暗闇での立場逆転、密室脱出モノとしての側面、老人の気狂い性による斜め上を行く展開、『金か警察か』の二択など、様々な仕掛けを用意。

 何より逃げる側がかつてのホラー映画定番の『リア充』ではなく『地方都市の金のない若者』という点が今のホラー映画らしい。しかし現代的ヒロインにする事で過去作『キャビン』でも言われていた『ホラー映画で最後まで生き残るヒロインは処女(純粋な女)でなければいけない』というセオリーは崩れ、男性が少し応援しづらいのは気になる所。最も戦慄をおぼえるであろうあるシーンも、男性以上に女性の方がより恐怖を感じれるものが用意されている。

 

44. デッドプール

ティム・ミラー監督

/ アメリカ映画 (アメコミ/マーベル)

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下ネタ満載でメタギャグ満載の破天荒なヒーロー像でありながら、悲劇を背負い愛する人のために戦う。アメコミヒーローの誕生ストーリーの王道中の王道を行く作品。

 マーベル作品らしく『敵を強く描くこと』よりも『人間同士のやり取りにある微笑ましさ』を描く。特に売春婦の彼女を救ってイチャつく場面。ベタな展開だがやりとりに下ネタが入る事で逆に『いい話』と思わされる。やはり『このカップルだからこそできるコミュニケーション』を描くのがいかに大事かを思わされる。

 構成も他のアメコミヒーロー誕生物語と違い時系列をいじり、冒頭にデッドプールが活躍してる姿を見せてくれるので『さっさとヒーローになる姿見せて!』というイラつきを最小限に抑える事に成功。かつメタギャグにしてもオーソドックスな構成展開でリズム的な効果を与えるのみに終始し世界観、ストーリーの大枠を壊す事は決してしない。裏を返せば想像よりもかなりまともな作品で、『普通に面白い』という範疇の映画で突き抜けた何かがないとも言える。

 

43. ディストラクション・ベイビーズ

真利子哲也監督作

/ 日本映画 (ドラマ)

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イエローキッド』『NINIFUNI』などの真利子哲也監督が手掛けた若者による群像劇。地方都市松山を舞台に、若者たちの欲望と狂気を描く。

 人を平気で吊るしあげようとする奴らばかりの昨今、殴られてもへこまないしつこさの格好良さとそこに屈する中途半端な奴らの姿は爽快。だがその爽快感は「男はなぐっても良いが、女はダメ」というある種の男女不平等なルールへのカウンター的な展開へと発展した時に恐ろしいものである事に観客は気づき、ハッとさせられる。

 純粋な暴力の権化として抽象化された柳楽優弥演じる主人公の魅力はある種のファシストに近い。そして彼についていく菅田将暉演じる男はまさに「ファシストに乗せられた存在」であり、徐々に卑小な存在として映画で描写されていく。世界中の右傾化する空気を偶然描いてしまった良作だが、この映画の柳楽優弥に盲目的に憧れる事も危険だ。

 

42. さざなみ

アンドリュー・ヘイ監督作

/ イギリス映画 (ドラマ)

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結婚45周年を一週間後に控えた熟年夫婦のもとに1通の手紙が届く。それは50年前に氷山で行方不明になった夫の元恋人の遺体が発見されたというものだった。

 銀座の劇場で見たが自分の隣はLGBTカップルだった。あとで知ったのだがアンドリュー・ヘイはLGBT監督として有名でゲイ映画で評価された人物だという。彼が熟年夫婦を描こうとしたというのが興味深い。LGBTカップルは夫婦の存在証明「子ども」が作れないが、今作はそんな彼らがより関心を持つであろう二人の過ごした時間が愛の証明と言えるのかを突きつける。

 45年という共に過ごした時間がかえって自分から美を奪い、夫の若い頃の記憶に勝てなくなってしまったとしたらそれほど虚しいものはない。熟年夫婦の物語になるが、今後増えてくるであろう「子どもを作らない作れないカップル」はもちろん、独身で人生を終える者たちの未来への不安と重ねる事ができる。もっと若者が見るべき未来に向けた映画。

 

41. ヒメアノール

吉田恵輔監督作

/ 日本映画 (ドラマ)

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人生に焦燥感を抱くビル清掃会社のパート岡田は、同僚からカフェの店員ユカとの恋の橋渡し役を頼まれる。彼女が働くカフェへと足を運んだ岡田は、高校時代の同級生・森田と再会。そしてユカから森田のストーキングに悩まされていると相談され…。

 突如過去の人間関係と現在の人間関係が交差してしまうというのはSNSが流行りだした10年以上前から言われていた事だが、原作通りの「病気」としてではなく「失う物がない人生に詰んだ男の行き当たりばったりの狂気」として描いた事がより現代にマッチしそれを大衆演劇界随一の演技派と言われる森田剛が好演。

 二部構成で反転する作りは監督の過去作『机のなかみ』『さんかく』同様、視点が変わる事で世界の見方が反転する要素は観客の想像力を刺激させる。テンポもサクサク進み助長な箇所がない。ただしテンポがよすぎる分、幸せの絶頂からの落差の見せ度合いというものが中途半端ともとれる。原作はどん底の人生からようやく掴んだハッピーが危険にさらされるジェットコースターが魅力だが、映画の岡田はスタートからどん底にあまり感じられず。

 

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