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2016 MY TOP FILMS 40位〜31位

40. 君の名は

新海誠監督作

/ 日本映画 (アニメ 恋愛)

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都会に憧れる田舎町に住む女子高生の三葉は、ある日自分が都会に暮らす少年になった夢を見る。一方、東京在住の男子高校生・瀧も自分が田舎町に生活する少女になった夢を見る。やがて彼らは引き合うようになっていくが…。

 「都会」と「田舎」を平等に描き「入れ替わり」「タイムリープ」「ディサスター」などの「みんな大好きSF設定」を用いるというボリューミーな内容だが、通常時間をかけるべき『恋愛の積み上げ』をほぼBPMの早い縦ノリ邦楽ロック1曲で見せてしまうイビツな作りで成立させる力技が見事。仲間内で議論になったのは可愛い先輩の『今、君は他に好きな子がいる』的な台詞で主役2人がお互い恋をしてる設定に見せてしまう点。確かに無理矢理だが、人の意見のままに恋愛する展開はアンチ自由恋愛の流れの一つだと自分は受け止めた。

 しかし『相手の記憶を忘れる』という設定が『2人がすぐに連絡を取りあえないようにするために』都合よく存在していてその設定が絡んでくる途端にこんがらがる点や、危機状況の間に2人の恋愛シークエンスを挟んだりしていちいち『カウントダウン回避モノ』としての緊張感を切ってしまうのも勿体無い。

 

39. すれ違いのダイアリーズ

二ティワット・タラトーン監督作

/ タイ映画 (恋愛)

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奥地の水上学校に新任教師として赴任してきたソーンは、元気な子供たちに振り回されながらも多忙な日々を送っていた。ある日、彼は一冊のノートを発見。それは前任女性教師エーンが自身の心の内をつづった日記帳で…。

 『拾った日記の書き手』というまだ見ぬ相手への恋と、立場が入れ替わりながらも中々出会わないすれ違いも入れた、まさにタイ版『君の名は』。ラストでようやく出会えて名前を言い合うシーンも有。感心したのは教師としての立場の『入れ替わり』が恋愛のすれ違いを描くだけでなく、きちんと子どもたちとの関わりに還元されている点だ。

 ただし、こと恋愛描写に関して登場人物が勝手に動き出さず、常に書き手の都合で動かされている。特に婚約者と結婚するか否か迷うヒロインの感情をもう少し掘り下げて欲しかった。ヒロインの婚約者がアジアドラマすぎるベタな嫌なキャラで、なぜ彼女は彼と長い間付き合ってきたのか。婚約者の浮気相手の女の子の妊娠問題も全く解決されないまま、何故か彼になびく。

 

38.エヴォリューション

ルシール・アザリロヴィック監督作

/ フランス映画 (ドラマ)

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少年と女性しか住んでいない島で母親と暮らす10歳の少年ニコラ。その島の少年たちは、全員が奇妙な医療行為の対象となっていた。そんな島の様子に違和感を覚えたニコラは、夜遅く外出する母親の後をつけてみることに。

 人間ではない別の生物を擬人化して描き、その生態のリアルを描写する事で耽美的な映像に必然を与えていく作風の監督。今作は水中で息ができる進化した女性たちが孤島で生活し、少年をさらっては自分たちの子どもを産ませる姿を映す。

 生態の中心に置かれるのが圧倒的に女性なのにそこに男性を少し配するのは何故なのか。女性のみで構成された世界観でも良いのになどと思ったが、やはり男性を排除してしまうと性という価値観がそもそもなくなり生態としてのビジュアルに魅力がなくなるからか。

 個人的にはギャスパー・ノエが女に対する執着みたいなものを延々と描き続けてきたのに対し、その嫁であるルシール・アザリロヴィックは圧倒的に女性中心の生態に男はほんの一部関わる程度という世界観を描いてる所に泣いた。 

 

37. レヴェナント蘇りし者

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作

/ アメリカ映画 (ドラマ)

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アカデミー賞監督賞・撮影賞・主演男優賞レオナルド・ディカプリオ)作品。狩猟中に瀕死の重傷を負ったハンターが、自分を荒野に置き去りにし息子を殺した仲間に復讐するため壮絶なサバイバルを繰り広げるさまを描く。
 撮影監督にエマニュエル・ルベツキを起用してる監督はどんどんストーリーで見せる気がなくなる。アルフォンソ・キャアロン監督の『トゥモローワールド』→『ゼログラビティ』の変遷も、テレンス・マリックの『ニューワールド』→『ツリーオブライフ』も変遷そうだ。画で見せる事が目的になってくる。イ二ャリトゥ監督の前作『バードマン』自体がワンカットで凄い画撮るのが目的なのに無理やりストーリーテリング与えた結果、薄味な底の浅いテーマな作品という印象を受けた分、今作は開き直ってシンプルなストーリーを凄いロングテイク撮影で見せきってたのは好感が持てる。
 しかし逆にそれでもタルコフスキーの真似をし空中浮遊使ったり神を描こうとしてたのはアリバイ的に深い作品に見せようとしてる感があざとい。ただ復讐劇を臨場感のある映像で見せる、それ以上でもそれ以下でもないはずだ。
 

36. ローグ・ワンスター・ウォーズ ストーリー

ギャレス・エドワーズ監督作

/ アメリカ映画 (スペースオペラ)

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エピソード3『スターウォーズ / シスの復讐』とエピソード4『スターウォーズ / 新たなる希望』の中間を描く物語。反乱軍の戦闘部隊『ローグワン』が帝国軍のデススター設計図奪還に挑む。

 人生で自分の役割をまっとうし次の人間にバトンを渡していく、ある種の東洋哲学・宗教的な人生賛歌。凡人たちを主人公にする事でより観客自身も生きる役割を持っている事を感じさせる。ある意味最もスターウォーズの本質を描いた作品。そもそも「4」の段階ではルークも凡人だった。

 ゴールが見えているだけに期待値超えはしないが、観客の大半が予想していた大きな三つの見所『シリーズに登場しないゆえ、役割を全うし倒れていくであろう登場人物の結末』『ダース・ベイダーの活躍』『レイア姫をどうごまかすのか』全てに納得の回答を提出。それでいてスター・ウォーズのバーゲンセールに陥ってしまう事を最大に配慮し、オープニングクロールは流れずテーマ曲は頭でかからず。ダース・ベイダーも登場しすぎず瞬間最大風速で見せ、エピソード4のオープニングクロールをきちんと補完するシナリオに。

 ただ観客が期待してた見所の全てがクライマックスで立て続けに描かれるという特性上、クライマックスにくるまでは知らない奴らの物語を見続ける事に。登場人物配置もチーム感があって楽しいわけでもなく『今ここにいてこれをしている』という現在地が分かりづらい。ただでさえ登場人物が多いのに立ち位置も分かりづらいので追いづらい作りにはなっている。
 

35. 母よ

ナンニ・モレッティ監督作

/ イタリア映画 (ドラマ)

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マルゲリータは恋人と別れた上に娘が反抗期。兄と一緒に入院中の母親の世話もしていた。さらには自身が監督する映画に出演する米人俳優とうまくいかず、ストレスを抱えていた。そんなある日母親の余命宣告を受け…。

 主人公の周囲が常にうまくいっておらず、仕事、母、娘の問題で常にイラついてる。ストーリーとしてはそこにある彼女自身の『人との距離の置き方』に問題があった事が露呈していく内容。周囲と距離を置くのが好きなマイペースなタイプの人には主人公には共感しつつ痛くも感じざるを得ない。タイトルに『母親』を置いたのが良かった。別に母親が中心に置かれている話というわけではなくむしろ様々な諸問題の一つにすぎないが周囲に愛されて慕われていた『母親』こそが主人公の精神面での手本でもある。母親は問題の一つであり手本でもあるという構造が面白い。

 『息子の部屋』でも息子の死によって、器用に生きていた人間の器用ゆえの問題が露呈していくし、そこにあるのが人との距離の置き方だった。その意味でこの監督の一つの大きな主張が垣間見える。ただし全編主張そのものもボンヤリとしか見えて来ないしそれでいてイラつかせる要因としてのやり取り、映画撮影シーンなどはかなりデフォルメされた露骨さがある印象も。

 

34. 海よりもまだ深く

是枝裕和監督作

/ 日本映画 (ドラマ)

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15年前1度だけ文学賞を受賞したことのある男は「小説のための取材」と理由を付けて探偵事務所で働いていた。彼は離婚した元妻と息子への思いを捨てきれずにいたが、響子に新しく恋人ができてしまい・・・。

 男という未来と過去ばかり見てしまう生き物のダメさ加減を描きながらも、登場人物皆が彼に優しく振る舞うのは監督の願望か。特に冷たく接しながらも別れた元妻がまだ男を愛している所が垣間見れる。特に彼氏に元夫の書いた小説の感想を聞くくだり。キツさを味わいながらも優しく癒されてしまう。素直に癒されて良いのか。先が見えない自分に延命治療を施すことが自分にとって良いことなのか疑問だ。

 いや、むしろそんなだから自分という男もダメで素直に今を幸せに思うべきなのか。自分が「今作に癒されるのは果たして良いことなのか」などとつい思い直してしまう。演出もシナリオも過去作の中でもかなり分かりやすく、いわゆる「リアル」と言われる描写ばかりでありながら伏線としてきちんと回収する巧さはある。ただ意図がピシッと決まりすぎている一方でそこから社会への広がりが見えてこない。結局のところ今作があくまでも社会の本当の意味でのリアルが襲いかかることのないフィクションらしい作品になっているからか。 

 

33. ヤングアダルトニューヨーク

ノア・バームバック監督作

/ アメリカ映画 (ドラマ)

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音楽はデヴィッド・ボウイの遺作にもプロデューサーとして参加したジェームズ・マーフィー(LCD SOUNDSYSTEM)。成功を掴んでいない40代のドキュメンタリー監督夫妻と、成功をつかもうと奮闘中の20代夫妻、世代の違うカップル2組の出会いを映す。

 上の世代のクリエイターは反社会的になったりドラッグに手を出したりでモラルがないと思われがちだが、表現に対する正義感が強くロマンがある。一方で下の世代のクリエイターは社会的にはまともでありながらも表現に対する正義感にはだらしなく、よく言えば柔軟で成功ルートを最短で行く。両者をぶつける事で上の世代のクリエイターの人間臭い魅力に焦点を当てるとともに、正義感ゆえくすぶる彼らへのレクイエムとしても機能している。

 個人的にはジェームズ・マーフィーのスコアに注目していたが思ったよりも控えめ。ラストでデヴィッド・ボウイがかかる。同監督の『フランシス・ハ』でもかけてたけど、あれはレオス・カラックスに憧れるサブカル女子の話なので軽いオマージュだったが、今作でかかるボウイは表現に対する真面目さと正義感の象徴である。

 

32. リップヴァンウィンクルの花嫁

岩井俊二監督作

/ 日本映画 (ドラマ)

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 『救いのない闇』と『メルヘンすぎるキラキラ』という過去作の作風を一つの作品に纏めたベストアルバム。闇があるから光も輝くゆえそれが成功。ただし180分尺。

 何も持たない主人公の日常の痛さを俯瞰して見守る『四月物語』的な入りから『リリィシュシュのすべて』の様な味方が裏切るエゲツない展開へと流れるのはまだ序盤。本当の物語は『ピクニック』のヒロイン的な真白の面白さと『花とアリス』的な女子二人のキャッキャしたふわふわした描写のシーンで紡いでいく。

 リアリティはリアルよりも突き抜けるべきと言う結婚式の新郎新婦の人生紹介が見事。全体として静かな芝居の会話劇の側面を見せながらもシーンを長く冗長にはしない。リアル志向の会話の中の些細な言葉尻を断片的にテンポよく繋いでいくのは商業映画とアート映画の中間としてのバランスも良い。

 好みの分かれるポイントはcocco演じた名前の通り真白なキャラクターの存在。眩しさとあざとさが同居。2時間主人公の人生を追っていったのに、急にストーリーの中心が真白に変わる展開。真白が自分の依存心や人生観をぶつけ死ぬ事が主人公が成長する展開を呼び込む事になるわけだが真白が語りすぎている。しかしシナリオの帰着点が無難ゆえ、裸になるシーンの面白さで強引に押し切るのは感情の延長上『ありえる』展開だから納得できた。

 

31. スポットライト世紀のスクープ

トーマス・マッカーシー監督作

/ アメリカ映画 (ドラマ)

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2016年度アカデミー賞作品賞脚本賞受賞作。新聞記者たちが神父による性的虐待と、カトリック教会がその事実を看過していたというスキャンダルを白日の下に晒す記事を掲載するまでを描いた実録ドラマ。

 週刊文春がスクープ連発で凄いと連日騒ぐ2016年の日本において、真のスクープをドラマで描くのは難しいのかもしれない。この手の記者が主役の作品の場合、日本では主人公に何か背負わせてキャラクターを個性的に描いたり、被害者を見た主人公にエモーショナルな行動動機を与え物語を正義に走らせたり、ライバル紙とのバトルものにしてみたり、はたまたドライな報道と報道される側の痛みとの心理葛藤を描く。残念ながら日本ではそんな手法しかウケようがないのだが、今作はそれらをある意味否定した作品。記者たちの細かい取材の積み重ねとそれにより知っていく真実を終始淡々と描いていく。

 中盤で記者たちが教会の真実を知り自分の背景と重ね感傷的になったり、ライバル紙を出し抜きスクープゲットを喜んだりといった日本作品にも見られがちな展開になるも、あくまでも今作はそこを描くつもりは毛頭ない。真のスクープとは事件の表層を報道することではないというテーマが置かれている。事件取材を積み重ねていき、そこから浮かび上がってくる社会問題の根本にとどめを刺すまでを浮かび上がらせていた。こんな映画を見た後だと、不倫した人間をひたすら処刑していくばかりの昨今の日本のメディアのスクープがいかに刹那的で消費的で受け手に無責任なものなのかと痛切に感じさせられる。