2016 MY TOP FILMS 20位〜11位

20. グランド・フィナーレ

パオロ・ソレンティーノ監督作

/ イタリア映画 (ドラマ)

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世界的にその名を知られる、英国人音楽家フレッド。今では作曲も指揮も引退し、ハリウッドスターやセレブが宿泊するアルプスの高級ホテルで優雅なバカンスを送っている。そんな中、英国女王から出演依頼が舞い込むが、なぜか頑なに断るフレッド。その理由は、娘のレナにも隠している、妻とのある秘密にあった…。

 年始に高齢ベストセラー作家と会話した際「お金の使い方や女をはべらす様な遊びを今の若者は知らなすぎる」と言っていたが、彼が言っていた「大人の男たるもの」のイメージがそのままこの作品に近いものを感じた。今作も過去のパオロ・ソレンティーノ監督作の例に漏れず、『オヤジ版フェリーニ甘い生活』であり一発で巨万の富を得た成功者のその後を描く。覚悟の通り大きな物語動機がない群像を見せる内容だが、前作以上にクリアでかつ計算された構図で老化した男女の汚い体を撮る様な皮肉交じりの演出と、インテリを否定する内容なのにどこまでもインテリな画を撮るところは洗練された印象。

 David Langのスコアのセンスも相変わらず良し。一昨年ピッチフォークで9点超えしたバンドSun Kill MoonのMark Kozelekが本人役で出てたり、かと思えば『グレイト・ビューティー』もそうだったが、時々チャラい音楽をあえて使うのがアクセントでこれまた良い。今回もEDMかかったりポップスターのMVみたいになったり。客層がインテリなジジイとババアなのにジャンクな音楽かけてとにかくおちょくる。世の富める高齢者の物語な分、貧しいくすぶる若者には嫌悪感を抱くポイントも多いが、自分とは全く異なる価値観の人物像、仮想敵が見られるのも映画の世界だからこそ。

 

19.  アクエリアス (原題)

クレベール・メンドンサ・フィリオ監督作

/ ブラジル映画 (ドラマ)

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海岸リゾート都市として知られるレシフェで生活し続ける音楽評論家のクララが、長年愛してきたアパートの地上げの危機にさらされ、それを断固として拒否し続ける姿を描く。近年W杯〜オリンピックで世界の話題になった都市開発が進む南米ブラジルを象徴する作品。

 【都市開発のドライな地上げとそれに抵抗する中年】という設定は日本人としてはモチーフとして古さを感じるが、両者の描き方にブラジル映画らしいユーモアがあって面白い。「乳癌・夫の死・メイドの裏切りなど人生の闇を乗り越えアパートで暮らす中年女性像」というと慎ましやかに生きてそうなものだが、さすがブラジル。青姦する者がいるほど色気立ったビーチが眼前に広がるアパートで音楽評論家として暮らし夜遊びもセックスもする。

 一方の都市開発の地上げ側の姿勢もドライながらも立ち退かせるためのアイデアにアパートでの爆音乱交パーティーからシロアリの巣の放置までユーモアがあった。特に主人公の女性に関して、これでもかと様々な背景を背負いながらも心を折らず暗く落ちずに唯一の拠り所である砦を守り抜く気丈さには、共感せずとも魅了された。これでカンヌで女優賞取れないとは。ただ、主人公が頑なに抵抗し続けた先に新たな何かが見えてこなかった。相手が仕向けたエゲツない地上げ方法のインパクトをそのまま仕返しに使うオチは気持ちよくもあるが、彼女の中で今回の一件通した成長というものを感じれず。これで良いのかという疑問も残った。 

 

18. 最愛の子

ピーター・チャン監督作

/ 中国映画 (ドラマ)

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深圳市街地で3歳になる男児が行方不明に。両親は息子の情報を集め3年後ついに中国北部の村で生活していた彼と再会。連れ戻そうとするが、息子から育ての親から離れたくないと激しく拒まれてしまい・・・。実話を基にした親子ドラマ。

 中国の社会問題『子どもの誘拐』を題材に『都市と田舎の経済格差』『離婚による片親の養育』『詐欺の横行』『一人っ子政策の弊害』など様々な問題が浮かび上がる作りだが、何より人物描写が丁寧で息子を誘拐された両親はもちろん、突然知らない人が両親になる息子、夫が拾ってきた子に愛情を注いできた不妊症の女、新たに子どもを作るべきか葛藤する被害者の会の男、それぞれの角度で物語が描かれる誠実さに驚かされる。普通なら引き裂かれた両親の苦悩と葛藤だけを描きそうなものだが、一方的じゃなく常に他者を想像する事を意識してる。

 そしてもう一つ驚かされたのは、こんな重たいモチーフを誠実に扱いながらも時折挟まれる中国的演出の滑稽な面白さ。子どもを救出したと思って袋を開けたら猿だった後のロングショットはギャグにしか見えないし、息子を奪われ追いかける誘拐犯の妻の後ろの農民軍団にも笑わされる。『最初は違和感がある描写が後から効いてくる』という演出も良かった。最初は三歳時のポンポンが可愛いけどバカっぽくて『もっと普通にルックスが良い子にすれば良いのに』と思ったが、その3歳時のバカっぽさゆえに3年後の成長した息子役の表情が生きてくる。被害者の会の演出も新興宗教みたいなので笑わせようとしてるのかマジなのかと違和感を覚えたが、後半になるとやはりある種の逃避行動としての側面が露呈していく。

 一つ難点を言えば、偽物とはいえ親から引き離されてしまった幼少期の子どもは発育上かなり問題を抱えてしまうはずなので、前途多難な未来を予期させても良かった気がする。彼ら両親の本当の苦悩はこれからやってくるはずなのだから。なので続編があれば見たい。 

 

17. 湯を沸かすほどの熱い愛

中野量太監督作

/ 日本映画 (ドラマ)

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1年前主人の一浩が家を出て行ったが、双葉と安澄の母娘は二人で頑張ってきた。だがある日いつも元気な双葉がパート先で急に倒れ、精密検査の結果末期ガンを告知される。彼女は残された時間を使いやるべきことを着実にやり遂げようとする。

 邦画でここまで誠実な脚本の映画は珍しい。シーンに出てくる伏線としての小道具や登場人物の配置がきちんとされるも伏線映画にありがちな『前に出されたあれ、そういう意味があったのか!』というものではなく出てくる時も意味があり、それを後で登場人物が感情の中で処理していく。登場人物の感情の流れも構成上ちゃんと作られていて、一つのシチュエーションがあったとしてそれぞれが別の受け止め方をする。

 家族はもちろん周囲の環境というものは大きな一括りのものではなく、一人一人の人間の集合体として作られている事に気付かされた。物語はTVドラマの短縮版の様な細かいエピソードの羅列的な物語展開になっていくがそれが飽きさせない工夫とかその類ではなく、一人一人ずつ解決していくしかないという『母親』の想いから来ている。そしてそんな『母親』の想いを受け止めた登場人物が作り上げる例の組体操は、まさに母親の生きた証。人生が最も報われた瞬間。

 そしてそれを演じた俳優陣、宮沢りえ杉咲花と妹役の子に関しても、それぞれ物語の中で段階ごとに感情の見せ方が変わる難しい役どころなはずなのに流れをきちんと作れていた。特に杉咲花に関しては表情だけでなく天性の声による繊細な演技が凄かった。演出面で唸らせる場面はあまりあったように思えなかったが「映画オタク的な作家性の日本人監督」でもなく「中身のない職人監督」とも違い、とにかく誠実さを感じる。そもそも御涙頂戴以外でこんなベタな設定で勝負すること自体誠実だ。ラストに出てくる題字がフォントではなく手書きデザインというのも良い。

 

16. FAKE

森達也監督作

/ 日本映画 (ドキュメンタリー)

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ゴーストライター騒動で日本中の注目を集めた佐村河内守をとらえたドキュメンタリー。騒動後沈黙を守り続けてきた佐村河内氏を自宅で撮影、その素顔に迫る。映像で表現をするという行為、作り手の視点、観客の視点が抱える様々な論点をこれでもかと浮き彫りにしている作品。その意味で映像制作に携わっている者には無視できない作品。

 監督はそもそも取材対象者の味方なのか?取材対象者の言うことは自然なのか演じてるのか?編集や撮影によって真実は変わらないか?視点で善悪は反転しないか?モノづくりに一番大切なのは作るものへの信念なのか?面白くなるなら方針を変えても良いのか?監督がカメラの前で指示する事は『やらせ』なのか?『表現と虚』の関係性をとにかく考えさせられる。もちろん自分の中での結論など簡単に出せはしなかったが、匿名で人を批判したり気軽にdisり気味の映画レビューを世界に発信できる現在、重要な論点のファクターである事には間違いない。

 中身自体も観客の視点が目まぐるしく変える構成が面白い。序盤は監督と佐村河内氏のやりとりの中で『彼は耳が本当に聴こえないのか』を探りながらサスペンス的な視点で見ていく。耳が聴こえないなら何故スピーカーが部屋にあるのか。手話をしてくれる奥さんがいない時のやり取りには緊張が走る。

 しかし真面目なやり取りの中で、腰が砕ける様な人間らしい佐村河内氏の豆乳大好きエピソードや新垣氏のファッション誌デビューなどのエピソードを加える事で佐村河内氏事件をモチーフにした不条理な笑いの視点に変わる。かと思えばテレビ局出演交渉にやってくる事で『メディアの被害者』としての彼を見る事にもなってくる。そしてスターになった新垣氏を見る事で次第に善悪の反転も起きてくる。
 次に現れてくるのは妻との関係性。手話で夫を支える彼女は共犯なのかという憶測ももちろんあるが、それ以上に夫婦として支え合う姿の嘘偽りのなさに推測の視点ばかりで見てきた観客はますます混乱する。最も脆いはず『愛』が語らずとも唯一の真実として主張してくる。そして次第に浮かびあがるのが『彼が音楽を好きには見えない』という視点。

 それに対する監督自身のドキュメンタリーという枠を壊す指示、そして何が真実で何が嘘なのかよく分からなくなってくるラスト。佐村河内守氏がラストで作曲した曲に対する感想を聞かれたらこれほど困る事はない。観客である自分自身、曲そのものよりもイメージや情報や体裁を気にして映画を見ている。だから『何が真実で何が嘘なのか』自分の心にきいても分からない。

 

15. イット・フォローズ

デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督作

/ アメリカ映画 (ホラー)

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傑作『アメリカン・スリープオーバー』で青春を切り取った同監督によるアートホラー。男と一夜を共にした女子大生ジェイ。しかし男はジェイに「それ」を移したこと、そして「それ」に捕まったら必ず死ぬことを告げる。「それ」は人に移すことができるが、移した相手が死んだら自分に戻るという・・・。

 海外ドラマ『ストレンジャー・シングス』がブームとなり、夏の興行では『ドントブリーズ』が勝利。大物になったジェームズ・ワンが『死霊館 エンフィールド事件』でホラーに回帰し、JJエイブラムスも『10クローバーフィールド・レーン』でホラーを描いた。もはや世界でホラーはトレンドになっている。中でも「幽霊や殺人鬼の類を全く怖いと思えない」という意味でホラーが苦手な自分には、今作が一番怖かった。何故なら「やがて年をとり死ぬという寿命から逃げられない」という恐怖を描いていたからだ。

 性行為によって移せる不幸の手紙的ホラー設定、ヒロインの隣には幼馴染でヒロインに想いを寄せる童貞男子。この地点で帰着点はほぼ見えてしまうし怖さのレベルも読めてしまうが、そんなホラー要素も普遍的テーマを伝えるためにある。終始『徒歩で追いかけてくるなら海を渡って逃げればいいじゃん!』『隠れても無駄、動いて逃げろ!』など、逃げ切れるものと浅はかにも考えた自分が、ラストに知る今作のメッセージに打ちのめされる。『自分も逃げきれない』

 ゆっくりとだが、確実に訪れる人間の死。しかし今作はそんな死の存在の恐怖を描くだけでなく、死と向き合う人間の姿も描いている。結局童貞男子ポールこそが正解を知っていて、彼は死の恐怖が迫ってこようとも愛する人と結ばれるならそちらを選ぶ。人はいずれ死ぬという恐怖を味わってまで何故生きなければならないのか。それは『死の恐怖と向き合ってでも生きる理由があるから』に他ならない。それが、彼にとっては好きな子と結ばれる事というのは至極真っ当だ。全くもって馬鹿にできない。
 ホラー要素自体は『想像力で煽る恐怖』と『それの怖さ』の交互作用で見せるオーソドックスで、恐怖度はあまり高くない。しかしデトロイトのひんやりした舞台設定に合った打ち込み・工業ノイズの音響だったりコバルトブルーの映像が美しくてホラーホラーしたダサさがないのも魅力。 

 

14. ロブスター

ヨルゴス・ランティモス監督作

/ ギリシャ映画 (ドラマ)

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カンヌ国際映画祭審査員賞作品。ホテルに集められ45日以内にパートナーを見つけなければ動物にならなければならない者たちの運命を追う。主人公はパートナーが見つけられなければロブスターになる事を願うが・・・。

 前作『籠の中の乙女』と同じで閉鎖的でキャッチな設定を台詞で徐々に見せていくタイプの作品で、やはり情報だけでなく簡素で綺麗で破綻のない画作りで設定に説得力を与えている。そして今作も相変わらずポップな設定。日本に例えれば『婚活という強迫観念により結婚を押し込めるメジャー側』と『そこへの反動で独身を貫き趣味にストイックに生きるマイノリティー側』二つの側をユーモアで描く世界観。

 この手の作品は日本であれば『結婚=勝ち組』という構図で独身30代〜40代女性をエグり共感を与えるような作品か、結婚の悲劇を描く事で理想と現実のギャップを描く両極端が多い。しかし、今作は両者ともに結局のところ自由を奪うものとして並列的に描かれている。そして主人公はどちらにも共感できず所属できない。

 それは端的に『動物になるなら100年生きれるロブスターになりたい』というタイトルに現れている。特に『マイノリティーのスタンスの不自由さ』を告発したのが良い。ただし作品構成は上手くなく中盤以降ストーリー自体も主人公同様設定から逃避してしまう。序盤の設定が面白いと感じれば感じる人ほど、そこに不満を感じてしまうようにも思う。 

 

13. 光りの墓

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督作

/タイ映画 (ドラマ)

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原因が全くわからない眠り病にかかった兵士たちが運び込まれてくるタイ東北部の仮設病院。ある日診療所に来たジェンは前世や過去の記憶を見れる女性と出会い、病院がある場所の地下にはかつて王の墓があったことを知る。

 序盤で主人公のおばさんが看護婦から『あそこにいる子は死人の魂と話せる特殊能力がある。FBIのスカウトが来たけど地元に尽くしたいと断った』的な話を聞かされた時のリアクションが、『偉いもんだねえ』的な「え?そっち?」的な回答。今年は古今東西年間300本以上映画を見て来たが、やはり同監督の作品ほど自分たちと同じ日常を生きている平凡な登場人物でありながらズレた会話をしている登場人物はいない。

 そして固定ショットの長回しにより次第に観客は作品内のゆったりした時間に飲み込まれ(もしくは睡魔に襲われ)、その積み重ねに慣れると遠い所に旅に出てしまう。今作は特に過去の王国に想いを馳せるくだり。ズレの延長がアッバス・キアロスタミトスカーナの贋作』的な面白さに振っていく所はもちろん、自分が遺跡観光に行っても味わえない想像力をタイの田舎の王国には巡らす事ができる不思議。ただ、タイの日常描写を描く際ちょっとあざとすぎないかと思う所も多々。何というか『海外の人はこういうの好き』というポイントを知りすぎている所をひしひしと感じた。 

 

12. マジカル・ガール

カルロス・ベルムト監督作

/ スペイン映画 (ドラマ)

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白血病で余命わずかな少女アリシアは日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。娘の『魔法少女のコスチュームが欲しい』という願いをかなえるため失業中の父は、高額なコスチュームを手に入れることを決意する。純粋無垢な願いが悲劇を生むという円環構造は2016年の世界を最も反映していると言える。
 「魔法少女になりたい」という少女の願いを軸に「恐喝→売春→殺人」と連鎖的に登場人物が悪事を働いていく構成。ラストは「少女が殺されてしまうので可愛いそう!」と思わされるものの、ではなぜ監督は少女を殺したのかと考えると今作の構造が見えてくる。今作の犯罪の根源には「少女の願い」があり、少女は願いを叶える事により命を失うという因果応報の作りにもなっている。世にはびこる犯罪は皆、純粋無垢な天使の願いを叶えるために存在しており、純粋無垢な願いが純粋無垢な存在を殺すという円環構造。ピュアな愛のために罪を犯し、そして愛を失うこととなるという人間の業が描かれている。
 省略描写も抜群。登場人物それぞれが何かを抱えているのだがあえてそれを直接描写で描かず観客に想像させる要素だけをばらまく作りは「行動動機を描かない事で行動動機に信憑性を持たせる」という不思議な作り。笑える要素もあって親父が娘が「魔法のステッキ」を欲しがっているという事実に気づいてしまい「魔法のステッキ」の値段を調べる一連のくだりはかなりコントだ。
 

11. ヘイトフル・エイト

クエンティン・タランティーノ監督作

/ アメリカ映画 (西部劇)

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現在も変わらぬアメリカ社会の縮図を描いた傑作。南北戦争後の米国。猛吹雪から避難するために店にきた賞金稼ぎの黒人、首吊り人と彼が捕まえた白人女、白人保安官、メキシコ人店番、絞首刑執行人、白人将軍。それぞれが警戒心を抱く中、事件が起こる。
 人狼ゲーム的な『全員が怪しく少しづつ排除されていく』というエンタメとしての良質な密室伏線回収脚本に、得意の血みどろ残虐描写が加えた堂々たる脚本演出。そこにアメリカを象徴する登場人物を多数配置し『リンカーンの偽手紙』によって『アメリカの理想の実現は遠い』と見せる描き方が見事。観ながら自分は、白人保安官のマニックスが【賞金稼ぎの黒人】と【ギャング団のずる賢い白人女】どちらを殺すかとの選択肢になった時『尊敬する白人将軍を殺した黒人を最後は殺すオチだろう』と思ったが、結末が違って驚いた。しかし、これが今作最大の狙いなのだろう。
 結局白人保安官が縛り首にしたのは『白人と対立した黒人』ではなく『男を従えるずる賢い白人女』である事は今になって見れば、公開後ヒラリー・クリントンが当選出来なかった事実と重ねられる。銃殺ではなく縛り首というエグい殺す動機は2人には直接的にはないが、とにかく【女の小賢しさ】に吐き気がして殺すのだろう。【白人対黒人】だった構造が小賢しい女性を殺すために手を組み反転する構造はもちろん、店番になりすますメキシコ人を排除する流れなどなど、現在にも続く米国社会の縮図を描いた傑作。